ネフィラセタムについて

◆薬効◆

脳機能改善剤(脳代謝改善剤)、脳循環、代謝改善剤

◆概要◆

nefiracetamは脳機能改善剤である。オキソトレモリン及びリドカインと類似の化学構造を有するピロリドン系(cyclic GABA誘導体)の脳・神経伝達機能改善剤である。主としてアセチルコリン(Ach)神経系、GABA神経系およびモノアミン神経系の機能低下にぶかつ的に作用する脳機能改善剤として開発されている。本剤は、経口投与により速やかに吸収され、脳内には活性未変化体として取り込まれる。

国内では、脳梗塞後遺症・脳出血後遺症に伴う意欲低下、情緒障害、知的機能低下、対人接触障害の改善を適応として1994年7月に申請された。また、アルツハイマー型痴呆症についても並行して臨床試験が行われており、脳卒中後遺症(精神症候)の治療薬として承認後に、適応拡大として申請を行う予定である。

◆非臨床◆

本剤はGABA神経系阻害薬によるマウスの記憶障害(受動回避および条件抑制反応の低下)を改善するほか、ラット学習行動(受動回避及び明暗弁別学習)に対しても次のような作用が確認されている。受動回避訓練直後に頭部電撃ショックを与えると著しい回避率の低下が観察されたが、本剤(1〜3mg/kg po)およびアニラセタム(10mg/kg、po)の訓練1時間前投与はこの回避率の低下を有意に改善した。またスコポラミン(1mg/kg ip)誘発による受動回避障害に対しても両剤(1〜30mg/kg、po)は有意な学習改善作用を示した。これらの記憶障害モデルにおける本剤とアニラセタムの改善作用は一般的な向知能薬と同様にベル型の用量作用関係を示した。なお、本剤1〜10mg/kg、po投与はスコポラミン投与マウスの脳内(海馬、前頭皮質、線条体、扁桃核)におけるAchレベルの低下を有意に改善した。シャトル型能動回避反応およびレバー押し型餌取り反応を指標とした正常ラットの明暗弁別学習において、本剤(3〜10mg/kg/day)連続投与はこれらの学習の獲得を明らかに促進し、また、脳内Ach神経系の障害モデルである前脳基底部損傷ラット、多発性脳梗塞モデルであるマイクロスフェアー注入ラットにおいても、本剤(3〜10mg/kg、po)は有意な学習障害改善作用を示した。マイクロスフェアー注入ラットにおいてはAch合成酵素(ChAT)活性、GABA合成酵素(GAD)活性の低下が認められたが、本剤はその活性低下を改善した。さらに、病態モデル以外でも本剤(3〜10mg/kg、po)はコリン取り込み量を増加させ、塩化カリウム刺激による脳切片からのAch遊離や無麻酔拘束ラットの脳内Ach遊離を増強こと、GABA代謝回転を高める事などが報告されており、学習獲得促進や学習障害改善作用にこれらの神経系における神経伝達改善作用の関与が考えられている。脳酸素欠乏症に対する本剤の保護作用を数種の実験的アノキシアモデルを用いて検討した結果、本剤(po)は正常圧低酸素症のマウスおよびラットの生存時間を顕著に延長し、最小有効量はそれぞれ30、10mg/kgであった。減圧低酸素、組織性無酸素および完全脳虚血(断頭)モデル(マウス)においても本剤(100mg/kg、po)は有意な脳保護作用を示した。これに対し、ビフェメラン(100mg/kg、po)は減圧低酸素モデルをのぞく各種モデルで保護作用を示し、ピラセタム、アニラセタム、プラミラセタム(1000mg/kg、po)の効果はアノキシアモデルのタイプによって異なっていた。本剤(30〜100mg/kg、po)は正常圧低酸素負荷により誘発される自発運動の低下(ラット)を有意に改善し、脳エネルギー代謝異常も改善した。一方、本剤の抗アノキシア作用の発現には中枢抑制作用の関与はないことが示唆された。本剤は、抗アノキシア作用においても幅広いスペクトラムを示し、その作用の一部は脳エネルギー代謝異常の改善に起因すると考えられる。本剤の作用部位は、神経細胞膜の抑制性G蛋白Gi/Go系を介した調節機構に作用し、電位依存性カルシウムチャネル(N/L型)の感受性を高めシナプスの神経伝達機能を活性化することが示唆された。

◆PhaseT◆

健常人48名を対象に単回投与試験(本剤10〜1200mg)および反復投与試験(600mg/日分3、7日間)が実施された。1200mg単回投与群で軽度の眠気と脳波の徐波化傾向などがみられた以外、特に本剤に起因すると思われる特記すべき副作用、臨床検査の異常および精神機能への影響は認められなかった。薬動力学的パラメーターはTmaxが1.2〜1.8時間、半減期が3.3〜5.9時間。Cmax(0.23〜22.6μg/ml)、AUC(1.78〜167.63μg・hr/ml、排泄完了まで)と本剤の投与量とはよい相関性を示した。

◆PhaseU◆

後期PhaseUでは脳血管障害慢性期症例で精神症候(自発性低下、情緒障害など)を有するもの306例(除外1例)を対象に至適用量検討目的として、本剤150mg/日(L群)、300mg/日(M群)、450mg/日(H群)、8週間投与による二重盲検比較試験を実施した。最終全般改善度(中等度改善以上)はL群24.5%、M群28.4%、H群41.7%で、用量依存性が認められた。精神症候全般の改善度(中等度改善以上)はL群23.5%、M群23.4%、H群33.3%でH群の改善率がもっとも高かった。また気力の低下、失語の改善でもH群がもっとも高かった。概括安全度(安全)はL群93.9%、M群95.0%、H群90.8%で3群間に有意な差は認めなかった。副作用はL群1%(1/99)、M群1%(1/100)、H群5.1%(5/98)に発現した。主な症状は左上腹部痛、吐き気、食欲低下などで、精神症候lはH群に認められた。いずれも軽度〜中等度であり、中止により改善した。有用度(有用以上)はL群25.3%、M群30.2%、H群41.2%であり、用量依存性が認められた。脳血管後遺症に対する本剤の至適用量は1日450mgと推測された。

◆PhaseV◆

精神症候を有する脳血管障害慢性期(脳梗塞後遺症及び脳出血後遺症)266例に対する本剤(450mg/日)の有用性をプラセボ(P)を対照薬として8週間投与による二重盲検試験にて検討した。最終全般改善度(中等度改善以上)は、本剤群32.3%、P群10.1%、で本剤群が有意に高かった。本剤による精神症候全般の改善率は4週後よりP群に比べ有意に高く、最終全般改善度(中等度改善以上)は、本剤群30.8%、P群10.9%であった。各項目では自発性低下、情緒障害、対人接触障害、知的機能障害においても本剤群がP群に比べて高い改善率であった。概括安全度(安全〜ほぼ安全)は、本剤群96.2%、P群97.7%で両群間に差はなかった。副作用は、本剤群3.8%(5/131)、P群3.0%(4/130)に発現した。主な症状は本剤群では消化器症状(吐き気、食欲不振など)、P群では発疹などであり、いずれも軽度〜中等度で投与中止により消失した。有用度(有用以上)は本剤群32.1%、P群10.9%で本剤群が有意に高く、本剤の有用性が示された。精神症候を有する脳血管障害後遺症65例を対象に、本剤450mg/日を6ヶ月以上12ヶ月にわたり長期投与した。最終全般改善度(中等度改善以上)は46.2%、精神症候全般改善度(中等度改善以上)は47.7%であり、投与期間が長くなるに従って、改善率の上昇ないし維持が認められた。概括安全度は86.2%。副作用は3.1%(2/65)に発現(下痢、発疹)したが、投与中止により症状は消失した。最終有用度(有用以上)は44.6%であり、有用性が示された。