◆薬理◆
ムスカリンM1受容体アゴニスト
◆薬効◆
脳機能改善剤(脳代謝改善剤)、脳循環・代謝改善剤
◆概要◆
nebracetam fumarateはaminomethyl pyrrolidine誘導体で、脳梗塞、脳出血後の機能障害改善およびアルツハイマー型老人性痴呆症を適応として開発されている。本剤は中枢神経系のムスカリンM1様コリン受容体に直接作用薬として働くことと代謝を活性化することによって効果をあらわすと考えられている。
◆非臨床◆
LD50(mg/kg)はラットにpo投与で♂2884♀3662、iv投与で♂♀257。本剤は動物実験において低酸素条件下で延命効果、in vitro脳障害モデルにおいて細胞保護作用を示し、行動薬理学的には記憶、学習、認知機能の低下を改善した。中枢コリン系活性化作用としては、コリン毒素AF64A脳室内投与によるアセチルコリン(Ach)含量の低下とコリンアセチルトランスフェラーゼ活性低下を、本剤連続投与により大脳皮質、線条体、海馬において著明に改善した。さらに、カテコールアミン神経伝達促進作用としてスコポラミン(S)健忘時におけるノルアドレナリン(NA)神経伝達の促進や、虚血モデル線条体切片のドパミン(DA)遊離低下を回復する事も報告されている。脳虚血ラットにおいて、本剤は20、50mg/kg、po前投与で脳虚血による海馬、線条体、大脳皮質内のエネルギー代謝障害が有意に抑制された。また、本剤は50mg/kg以下の用量あるいは0.00005mol/l以下の濃度でAch、NA、DAの伝達障害を改善した。さらに、本剤10、32mg/kg前投与により、シアン化ナトリウム投与による致死時間は有意に延長され、本剤の何らかの保護作用が脳神経細胞の虚血障害を軽減し延命効果をもたらしたものと推測された。Sまたはラット脳虚血による記憶障害に対する本剤の効果を、アニラセタム(A)と比較した。S(0.56mg/kg、ip)によって誘起されたエラー数や休止回数は本剤10〜32mg/kg、po投与によって減少した。A(10〜100mg/kg、po)はS処置ラットでの休止の増大に影響を及ぼすことなくエラー数の増大を減少させた。5分間脳虚血ではエラーや休止は明らかに増大した。本剤32、56mg/kg、po投与を、再灌流直後、そしてrun way試験1時間前に投与するとA(32、100mg/kg、po)と同様に、脳虚血ラットのエラー数の増大を減少させたが、両剤とも休止の増大を減少させることはできなかった。以上、本剤はラットでのSや脳虚血による記憶作業の障害に明らかな効果を示した。認知障害はアルツハイマー病や脳血管障害の早期にみられる。S(0.5mg/kg、ip)、テトラヒドロカンナビノール(THC:6mg/kg、ip)、脳虚血によって誘起された認知障害(ラット)に対する効果を放射状迷路試験を用いて検討した。本剤はS及びTHC誘起の空間認知障害をそれぞれ10mg/kg po投与、100mg/kg po投与で回復させた。また、脳虚血による空間認知の中断を50mg/kg、po投与で予防した。生化学的検討では、本剤はS投与によって減少した前頭皮質や海馬の脳NA量を増大させた。以上より、本剤はコリン作動性メカニズムだけではなく、脳海馬NAメカニズムを合わせて認知を高める作用を持つものと思われた。
◆PhaseT◆
健常人12名(のべ30名)を対象に本剤単回投与(200、400、1200mg/回)および連続投与(1200mg/日分2 を13回反復投与)をした。薬剤投与に起因する異常は認められず、自覚症状では単回投与でめまい・頭痛が各1例、連続投与では心蕎部痛が1例にみられたが、いずれも軽度・一過性であった。単回投与時(空腹時)のパラメーターはAUCが3.48〜17.99μg・hr/ml、Cmaxが0.90〜3.95μg/ml、Tmaxが1.1〜1.6時間、半減期が1.7〜2.7時間、未変化体の尿中累積排泄率(24時間)が36.2〜42.1%。連投による蓄積性はなかった。
◆PhaseU◆
精神症状を有する脳卒中後遺症41例を対象に本剤の前期試験を実施した。結果、本剤は精神症状を有する脳血管障害に有効であり、安全性も高く、至適用量は400〜800mg/日と考えられた。脳血管障害に対する本剤の有用性・安全性の用量設定試験を行った。本剤400mg、800mg/日およびプラセボの3群間でtouyokikannwo8週間として二重盲検比較試験を実施した結果、400mg投与群と800mg投与群の全般改善度に有意差がなく、400mg群に副作用がより少ないことから、至適用量は400mg/日と結論された。
◆PhaseV◆
神経症状を有する脳卒中後遺症に対する有用性をイデベノン(I)を対照薬とした二重盲検比較試験により検討した。本剤400mg/日分2、I 90mg/日分3で8週間投与した。総症例307例で解析対象は302例(本剤群153例、I群149例)であった。最終全般改善度は中等度改善以上で本剤群31.3%、I群23.5%、軽度改善以上で72.8%、64.4%を示し、最終概括安全度も問題なしが本剤群94.8%、I群94.0%でともに有意差はなかった。有用度は有用以上で本剤群30.5%、I群23.5%、やや有用以上で71.5%、64.4%を示し、有意差はなかった。精神症候全般では脳梗塞後遺症で脳出血後遺症より優れる傾向を示す改善度が認められた。個々の精神症候では自発性低下全般の軽度改善以上で本剤群が有意に優れ、本剤の主な標的症候は自発性低下全般と言い得る。また、情緒障害ではIとほぼ同等の成績を得た。副作用は本剤群5.2%、I群4.0%と有意差はなく、一般に軽度であり、臨床検査値にも異常変動は認められなかった。なお、本剤群に皮膚症状が3例認められた。本剤はIと同様に優れた有効性を示し、その標的症候は自発性低下、情緒障害などである。なお、精神症候を有する脳血管障害慢性期70例に本剤(顆粒)2g/日分2(フマル酸ネブラセタムとして200mg)を長期投与(8週投与後に継続可能な場合は24週以上投与)した結果、全般改善度、精神症候全般の改善度は投与期間が長くなるにつれて上昇した。最終全般改善度は中等度改善以上で38.8%、軽度改善以上で82.1%を示し、概括安全度は最終で100%、最終の有用度は有用以上38.3%、やや有用以上83.6%であった。自発性低下全般、情緒障害全般の最終改善度は中等度改善以上で30.3%、29.7%、軽度改善以上で66.7%、68.8%であった。副作用は1例もなかった。本剤は長期投与がより好ましいと結論された。