モダフィニルの中枢性α1アドレナリン受容体刺激作用:実験動物における研究

新薬であるモダフィニルの単回投与は、ラットとマウスには運動性の亢進を、サルには夜間の活動性の上昇をもたらす。ラットとマウスにおいて、常同行動やアンフェタミンによりもたらされる常同行動を強める作用は観察されないが、高用量のモダフィニルにおいては、ラットで、わずかにアンフェタミンにより引き起こされる常同行動を強める作用が観察される。モダフィニルによって引き起こされるマウスの活動性の亢進は、中枢性α1アドレナリン受容体ブロッカーであるプラゾシン、フェノキシベンザミン、そしてレセルピンによってブロックされるが、ドパミンD1、D2受容体ブロッカーのハロペリドールや、D2ブロッカーのスルピリド、末梢作用をもつα1受容体ブロッカーのフェントラミン、α2ブロッカーのヨヒンビン、βブロッカーのプロプラノロール、そしてカテコールアミン合成阻害剤であるαメチルパラチロシンなどではブロックされない。同様にサルにおいては、プラゾシンでモダフィニルの運動性亢進がブロックされる。興味深いことに、モダフィニルはマウスやモルモットにおいて明らかな末梢神経作用を生じない(よだれ、肩の筋肉の収縮は生じず、わずかな散瞳作用が、高用量の時に生じる)。それ故、モダフィニルは齧歯類や霊長類に対して強い刺激作用を生じさせる。これらの作用は、好ましくない末梢神経作用を伴うことなく中枢のα1受容体刺激作用に結びつけることが出来る。

1.緒言

例えば、メチルフェニデートやアムフォネリン酸のような非アンフェタミン性の薬物や、アンフェタミン、ノミフェンシンやアミネプチン、あるいはブプロピオンにような非イミプラミン様の抗うつ剤、そして尿路消毒剤であるオキソリン酸のような種種雑多なクスリを含む多くの精神刺激薬は、動物において運動性を亢進させる。運動刺激はたいてい、カテコールアミンの放出をするアンフェタミンのようなクスリや、ドパミンの再取り込みを阻害するメチルフェニデート、そしてノミフェンシンを一般に高用量服用することによる常同行動の結果として生じてくる。覚醒期の増加は、例えばノミフェンシンやオキソリン酸などの多くのクスリによって、人間において報告されている。
私たちが行った以前の研究において、あるクスリが動物モデルにおいて活性を持ち、刺激作用があることが予言されていたが、それは化学的、そして薬理学的にアンフェタミンやメチルフェニデートのようなクスリとは異なっていた。そして、そのクスリ(私たちが発見したアドラフィニル)は、明らかな交感神経興奮作用なしで、独特な活性をマウスやサルで示した。
このクスリは、末梢の交感神経興奮作用なしに、運動性や覚醒時間を増加させた。このアドラフィニル分子は、部分的に代謝されてアミド型のモダフィニル【(ジフェニルメチル)スルフィニル−2 アセトアミド】になるので、この代謝物の合成と、動物におけるその代謝物の運動性、夜間活動性、そして常同行動への効果を研究することは、非常にやりがいのあることだと思われる。

2.使用薬剤と方法

意味がないので省略。

3.結果

3.1.総合的観察

3.1.1.マウス

過活動性と過反応性が、常同行動なしでモダフィニル4〜256mg/kgの用量範囲の腹腔内投与で生じてくる。わずかに、短時間の瞳孔散大が30分間現れたが、それはもっとも高い用量(256mg/kg)を使ったときのみであった。流ぜんや、肩の筋肉の収縮は観察されなかった。

3.1.2.ラット

もっとも低用量(2,8mg/kg:腹腔内投与)を使ったとき、モダフィニルはあらゆる顕著な行動や末梢の変化を生じなかった。高用量(32,128mg/kg:腹腔内投与)を用いたとき、過活動性、過反応性が、用量に依存して30分〜2時間続いたが、常同行動は観察されなかった。流ぜんや、肩の筋肉の収縮も現れなかったが、唯一高用量を用いたときのみ瞳孔散大が現れた。

3.2.活動性に対する効果

3.2.1.マウスにおける運動性の亢進

テスト30分前に投与した時、モダフィニル(32〜128mg/kg:腹腔内あるいは経口投与)は強い用量依存的な運動性亢進をマウスにおいてもたらした。モダフィニルによってもたらされた運動性の亢進は、腹腔内投与後15分で最大、経口では30〜60分後に最大を示した。そして用量に依存して1〜4時間、その作用は続いた。モダフィニルの腹腔内への注射により即座に記録する前から現れる過運動性は、中枢作用を持つα1−ブロッカーのプラゾシン、そしてフェノキシベンザミンによって阻害されるが、フェントラミンによる阻害は、モダフィニルの投与1時間前に与えても、起こってこない。
同様のコンディションのもとで、β−ブロッカーのプロプラノロール、そしてドパミンD2受容体ブロッカーのスルピリドは、モダフィニルによって誘起された過運動性をほとんど阻害しなかった。ところが、選択的α2−ブロッカーのヨヒンビンは、わずかにモダフィニルの作用を強めた。(モダフィニルなしで、ヨヒンビンのみの時と比較して、約26%モダフィニルの作用を増強した)強力なα1−ブロッカーの作用も併せ持つ非選択的ドパミン受容体ブロッカーのハロペリドールは、強く自発運動を抑制し、同量のモダフィニルによって誘起された過運動性を減少させる。
記録する1時間前にモダフィニルなしで投与した時、プラゾシン(1、2mg/kg)は自発運動を減少させた。プラゾシン(2mg/kg)は、モダフィニル(32〜128mg/kg)によって誘起された過運動性を減少させる。プラゾシン1mg/kgでは、モダフィニルの低用量(32〜64mg/kg)による運動性の増加は起こさないが、記録前30分に腹腔内投与でモダフィニルの高用量(96〜128mg/kg)を与えた事による過運動性は、プラゾシン1mg/kgで阻害された。明らかな過運動性の抑制があったけれども、AMPTによるカテコールアミン合成阻害は、マウスにおいてモダフィニルによって引き起こされた過運動性を阻害しない。一方、カテコールアミンとインドールアミンの貯蔵に干渉するレセルピンは、自発運動を劇的に減少させ、モダフィニルによって誘起された過運動性をかなり阻害する。同様の条件下で、この自発運動の減少に関わらずレセルピンはアンフェタミン(3〜6mg/kg)により誘起された過運動性を阻害することは出来なかった。

3.2.2.サルにおける夜間活動性

モダフィニル(16〜64mg/kg:腹腔内投与)は、夜間活動時間を増加させたが、統計学的に有意差が出たのは唯一もっとも高い用量を使ったときのみであった。この作用は、夜中の最初の三分の一でより明らかであったが、もっとも高用量を用いた後の夜は、夜じゅうずっとこの作用が続いていた。別の実験では、モダフィニル(32mg/kg:経口投与)は夜間活動時間のかなりな増加を引き起こし、1時間前にプラゾシン2mg/kgを腹腔内投与しておくことによりその作用はかなり減少した。

3.3.常同行動

3.3.1.マウス

モダフィニルは128mg/kgまでの用量の腹腔内投与では、マウスにおいてほとんど常同行動を生じない。常同症の指標は、ほんのわずか、モダフィニルの高用量(256mg/kg)を用いたときのみ増加するのに対し、アンフェタミン(4mg/kg:腹腔内投与)では、強く、長時間続く常同症を生じた。同じ条件下で、アポモルヒネ(4mg/kg:皮下注射)は強力だが、短時間の常同行動を生じさせた。

3.3.2.ラット

256mg/kgの用量までの腹腔内投与では、モダフィニルはラットにおいて常同行動を引き起こさなかった。逆に、アンフェタミン(0.5〜2mg/kg:腹腔内投与)は、強い長時間にわたる常同行動を生じさせ、アポモルヒネ(0.5mg/kg:皮下注射)は強力だが、短時間の常同行動を引き起こした。モダフィニルは、2〜32mg/kgの腹腔内投与をしたとき、アポモルヒネ(0.5mg/kg:皮下注射)によって引き起こされた常同行動を、ラットにおいて変化させないが、もっとも高い用量(128mg/kg)を用いたとき、わずかに、しかしかなりこの常同行動を強めた。モダフィニルの128mg/kgまでの用量の腹腔内投与では、ラットにおいて、アンフェタミン(0.25,0.5,1,2mg/kg:腹腔内投与)によって引き起こされた常同行動をほとんど強めないか、あるいは阻害した。

4.ディスカッション

マウスにおいて、経口あるいは腹腔内へのモダフィニルの広い用量範囲における投与によって、運動性が増加した。プラセボを用いた腹腔内投与と経口投与のデータを対照として行うと、モダフィニルの経口投与よりも腹腔内投与の方がより強力であるのは明白になった。運動性の強さと持続時間は用量依存的である。また、サルにおける夜間運動性の増加は、経口投与のモダフィニルで見られる。このように、モダフィニルは水への溶解性に乏しいのにも関わらず、消化管を通過し、血液脳関門をも通過すると思われる、行動に対する作用を表すことが出来る。
ノルアドレナリンとドパミンは、運動性の中枢に関連している主な神経伝達物質である事が詳細に解明されている。ノルアドレナリンをマウスの脳側室に投与すると、運動性の亢進を引き起こす。この作用は、フェノキシベンザミンで阻害されるが、プロプラノロールでは阻害されない。ドパミンは同じ条件の下で活動性を亢進させ、より高用量においては、常同行動を引き起こす。すなわち、これらの作用の両方は、ピモジドでブロックされる。さらに、ラットの核側部へのドパミン急速注射は、本科の神経伝達物質の核側部への注入では真似の出来ない自発運動性亢進において、神経遮断(薬)の感受性を増加させる。
クスリによって引き起こされる過活動性のコントロールにおけるドパミンとノルアドレナリンの相対的重要性は異なるが、クスリや動物種、実験の手法による。脳のドパミンとノルアドレナリンは、通常のマウスにおいてアンフェタミンにより引き起こされる刺激の進展に必要であることは明らかであり、一方、脳のドパミンだけは、ラットやレセルピン処理をしたマウスにおけるデクスアンフェタミンによる中枢刺激作用の主な重要性を占めていると主張されている。一方、非アンフェタミン性刺激薬のメチルフェニデートやアムフォネリン酸は、ラットにおいてノルアドレナリンニューロンには影響を与えずに、ドパミンニューロンに対して作用することが報告されている。
私たちの結果は、マウスにおける過運動性や、サルにおける夜間不眠において、ノルアドレナリンの役割が重要であることを示すことになった。これらの作用は、プラゾシンやフェノキシベンザミンのような中枢性α1アドレナリン受容体ブロッカーが阻害作用を引き起こす用量を末梢に注射することで阻害されるが、簡単に脳へ移行しないフェントラミンは、阻害作用を持たない。プラゾシンやフェノキシベンザミンは選択的にシナプス後α1アドレナリン受容体へ作用する。未処理の中枢性シナプス後α1アドレナリン受容体はそれゆえに、モダフィニルによって引き起こされたマウスにおける過運動性と、サルにおける夜間活動刺激の進展に必要であると思われる。
これらの結果は、大抵脳への移行性をほとんど持たないため、中枢に直接注入されるα1拮抗薬の投与の結果起こる過運動性の増加を示している他の多くの研究結果と一致する。このようなα1アドレナリン受容体による行動変化(過運動性にも関連する)は、通常の、あるいはレセルピン処理したマウスにおいてノルアドレナリンやフェニレフリン、メトキサミンの脳室内投与後、ラットにおいてくも膜下腔内投与の後に報告されている。これらのドパミンや5−HTP、阿片の行動的運動作用とは異なる行動的な効果は、プラゾシンやフェノキシベンザミンで抑制されるが、ヨヒンビンやプロプラノロールでは阻害されない。けれども、私たちはモダフィニルの中枢への注入後の過運動性が、前述のクスリの水への溶解性の不足のためであるかを決定することは出来ない。
体内のノルアドレナリンがα1アドレナリン受容体を刺激するという間接的関連性は、モダフィニルがマウスで過運動性を引き起こす事から説明でき、この作用はレセルピンにより完全に無効にされるので、レセルピンはカテコールアミンを枯渇させる事が知られている。けれども、アンフェタミンにより引き起こされる過運動性とは異なり、モダフィニルによって引き起こされる過運動性はAMPTによるチロシンヒドロキシラーゼ阻害によっては阻害されない。このように、ノルアドレナリンの蓄えがAMPTに反応しないのは、マウスにおけるモダフィニルによる過運動性の増加において、主に重要性をもつ事は明らかである。加えて、ラットの過運動性コントロールは、locus coeruleus(α1とα2アドレナリン受容体がそれぞれ反対の役割を演じている)における活性に関連しており、さらにはマウスにおいて、過活動性はおそらくα1アドレナリン受容体の活性化の結果であると思われる。ところが、鎮静作用はα2アドレナリン受容体の活性化の結果生じる。locus coeruleusの中のノルアドレナリン含有細胞は、覚醒時により活性を持っており、REM睡眠の間は低活性で、locus coeruleusノルアドレナリン作動性システムは警戒性と覚醒に関与しているのではないかとする仮説が導かれる。それは、大脳皮質は皮質のα1アドレナリン受容体の活性化による睡眠−覚醒サイクルの開始と維持に関連していると提案されていることへの投影でもある。けれども、私たちの研究におけるα1アドレナリン受容体が関連した末梢交感神経興奮作用の不足と、ラットとイヌにおける心血管の研究はまだ現在も説明されないままになっている。
モダフィニルは間接的にcoeruleo−皮質ノルアドレナリン作動性経路を上げ下げするメカニズムによるα1アドレナリン受容体刺激作用を強めることが出来る。それはまた、受容体−受容体相互作用による異型静位メカニズムにおいて役割を演じており、より多くの情報を、膜を通過して伝えることを可能にし、シナプス後膜に到達するシグナルの通過を許すことによってより、微妙な伝達の調節を導く。睡眠−覚醒サイクルのコントロールにおけるβアドレナリン受容体の関連性は、完全には否定できないが、これらの受容体は、プロプラノロールによってほとんど阻害されないモダフィニルにより引き起こされるマウスにおける運動性活性への関連性からは除外する事が出来る。
モダフィニルの中枢作用におけるドパミンメカニズムの関連性は実証できない。ドパミン作用をブロックするクスリであるスルピリドやハロペリドールは、マウスにおいて、モダフィニルによって引き起こされる過運動性を阻害しない。実際に、強力な活動性の低下がハロペリドールにより生じるにも関わらず、基礎的な活性の増加割合はほとんど変化しない。これらの条件の下で、モダフィニルが引き起こす過運動性の期待される拮抗作用は、ハロペリドールの強力なα1アドレナリン受容体阻害特性では証明されない。すなわち、これらのα1アドレナリン受容体阻害特性は、ドパミン受容体をブロックするのに必要な用量よりも明らかに多く、運動性を抑制してしまう。モダフィニルによって引き起こされる過運動性作用とは異なり、アンフェタミンにより引き起こされた過運動性は、ハロペリドールやピモジドで阻害される。非選択的ドパミン受容体刺激薬(アポモルヒネ)や、選択的ドパミンD2受容体刺激薬(クインピロール)とは異なり、モダフィニルはマウスにおける常同症、ラットにおける口部常同症や微妙な常同症などを生じさせない。さらに、低・中用量では、モダフィニルはラットにおいてアンフェタミンにより引き起こされた常同行動を強めない。そして、唯一高用量の時のみ、モダフィニルはこれをわずかに強める。
この結果を尊重し、私たちの結果は、モダフィニルはアムフォネリン酸やアンフェタミン、メチルフェニデート、アポモルヒネ、ノミフェンシン、そしてブプロピオンとは異なるという証拠を供給した。過運動性と覚醒の間の関係の維持において、ネコについての予備的なEEG研究は、モダフィニルは警戒心を強めるという証拠が示された。ひとまとめにして考えると、これらの結果は、クスリによって引き起こされた過運動性が、直接あるいは間接に特定の中枢α1アドレナリン受容体活性化に関連づけられるということが、強力な刺激作用の予見的なものとして考えられることができるのを提案する。実際に、臨床薬理学と臨床での研究は、モダフィニルの通常、あるいは断眠中の人における警戒性に与える影響として、刺激する作用を与えることが確認されており、ナルコレプシーや特発性過眠症において有用性が保証されている。
結論として、マウスにおいてモダフィニルによって引き起こされた過運動性、サルにおける覚醒時間の増加は、特定のドパミンシステムなしで中枢α1アドレナリン受容体活性に依存すると思われる。末梢神経作用がないのは注目すべき点である。