フェニルプロパノールアミンの食欲抑制作用におけるα2−アドレナリン受容体

(+)、(−)−ノルエフェドリンのラセミ体であるフェニルプロパノールアミンは、鼻のうっ血除去剤として75年間、食欲抑制剤として10〜20年間使われてきた。その食欲抑制作用を生じる分子構造は解明されていない。フェニルプロパノールアミンは、末梢神経系においてα1−アドレナリン受容体への刺激作用によってイノシトールリン酸の蓄積を増加させる。けれども、中枢神経系ではα1−アドレナリン作動性は観察されない。というのは、イノシトールリン酸の蓄積が観察されないからである。私たちは、ラットの大脳皮質においてα1−アドレナリン受容体にプラゾシンを、α2−アドレナリン受容体にヨヒンビンをそれぞれ結合させ、ノルエフェドリン(フェニルプロパノールアミンの事)と置き換える事で(+)、(−)体の強さを比較した。

両方の鏡像体は(10μMの濃度までで)α1−アドレナリン受容体に結合したプラゾシンとは置き換わらなかった。けれども、10μM以上の濃度では、(−)−ノルエフェドリンは(+)−ノルエフェドリンよりもはるかに強力だった。唯一高濃度で観察されたα1−アドレナリン受容体からの(−)、(+)−ノルエフェドリンの置き換えは、フェニルプロパノールアミンが脳のイノシトールリン酸蓄積を増加させないので薬理学的重要性を持たないのであろう。

対比して、(−)、(+)−ノルエフェドリンはそれぞれヨヒンビンの10μMと50μMの濃度でα2−アドレナリン受容体において50%置き換わった。高濃度において、(−)−ノルエフェドリン(log−5M)は、(+)−ノルエフェドリンよりα2−アドレナリン受容体に対するリガンドとして強力である。けれども、低濃度では(例えば0.1μM)、(+)−ノルエフェドリンの方が(−)−ノルエフェドリンよりもα2−アドレナリン受容体のリガンドとして強力であることが明らかとなった。この案は、治療的濃度において(+)−鏡像体の方が(−)−鏡像体よりもより強力なα2−アドレナリン受容体のリガンドである事を示している。あるいは、(+)、(−)−ノルエフェドリンはα2−アドレナリン受容体の異なるサブタイプに選択的な親和性を示すのではないだろうかとも考えられる。(−)、(+)−ノルエフェドリンの、この脳のα2−アドレナリン受容体に対する親和性は食欲抑制効果で比較でき、それぞれ28、47mg/kgで食欲を抑制する。私たちの結果は、両方の鏡像体はそれぞれ非常に低いαアドレナリン受容体への親和性を持ち、(−)、(+)−ノルエフェドリンの中枢食欲抑制活性はα2−アドレナリン受容体との相互作用により引き起こされるのであろうという事を示している。