ラット脳ホモジネートにおける脂質過酸化に対する1−デプレニルの作用

フリーラジカルによって引き起こされた脂質酸化は、細胞障害のメカニズムの一つとして推定されている。中枢神経組織は、特に酸素ラジカルの発生や、脂質過酸化反応によって影響を受けやすい。多くの研究はこのメカニズムを、老化や、パーキンソン病・多種の(神経、動脈)硬化症・老人性痴呆症・etc・・・を含んだ中枢神経系の多種の退行性障害を与えるものとしている。脳組織の脂質過酸化の程度は、微量金属、とりわけ鉄含量とMAO活性が同様に影響を与えることが示唆されている。MAOは脂質過酸化の開始に関連する過酸化水素を生成してしまう。選択的、非可逆的MAO−B阻害薬であるデプレニルは、パーキンソン病の治療薬として使われているが、その作用は完全には解明されていない。
私たちは、試験管内でラットの脳ホモジネートを用い、脂質過酸化に対するデプレニルの作用を調査した。チオバルビツール酸価を測定することにより結果を評価した。脂質過酸化は、ADPや三塩化鉄の存在下、NADPHやビタミンCによって引き起こした。両方の系で、デプレニルは用量依存的に脂質過酸化を阻害した。デプレニルが50%阻害作用を生む濃度は、それぞれ680/umol/Lと310/umol/Lであった。
ラット脳における部分的なチオバルビツール酸反応性物質の分布はまた、デプレニル処理をした動物において見積もられている。ラットは皮下注射で一日0.25mg/kgのデプレニルを4週間投与した。7つの脳領域におけるチオバルビツール酸反応性物質レベルは、M.Mishra et al.(1980)の方法によって求められ、下に示してある。

チオバルビツール酸反応性物質(nmol/g 非乾燥重量)

変化(%)

対照

デプレニル処理

嗅球

16.0±2.0

12.0±1.3

25.0

視床下部

13.2±2.5

11.0±1.3

16.7

線条体

18.6±5.8

13.7±0.6

26.3

大脳皮質

13.6±1.6

13.2±3.4

2.9

海馬

12.9±1.8

12.9±3.1

小脳

13.6±2.8

13.1±1.2

3.7

白質

17.2±2.9

21.5±0.8

25.0



私たちのデータは、試験管内でNADPHとビタミンCの両方によって引き起こされた脂質過酸化に対するデプレニルの阻害作用が用量依存的であることを示している。対して、7つの脳領域において、選択的MAO−B阻害作用を持つ用量でデプレニルを長期間処理した後の脂質過酸化物のレベルはわずかに影響を受けるにとどまった。チオバルビツール反応性物質のレベルは、線条体でかなり減少したが、白質では逆に高められた。