第3世代抗うつ剤の歴史
ここで、抗うつ剤の歴史がまさにドラスティックと言って良いほど変化しました。
第1、第2世代抗うつ剤の副作用等を軽減した選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が臨床に登場してからうつ病の治療も新しい時代に入ったと言えます。
SSRIが登場したときに臨床医が興味を持ったのは、抗うつ薬として優れていることだけでなく、従来では適切な薬物療法がなかった強迫性障害、パニック障害、神経性過食症にも効果が期待できる点です。さらに心的外傷後ストレス障害、社会恐怖、月経前緊張症候群などへの有効性も示されています。
欧米では1980年代の後半からSSRIの開発が始まり、90年代には従来の三環系抗うつ薬(TCA)からSSRIに主流が移りました。日本では 5 月にSSRIのフルボキサミンが発売されたばかりですので、「新しい時代」と言ってもスタートラインについたばかりかもしれません。
そうして登場したSSRIは、90年代に入り国内でフルボキサミンの臨床試験が始まりました。しかしながら、米国ではSSRIの開発が先行し、92、93年からフルオキセチン、サートラリン、パロキセチンが爆発的に売り上げを伸ばし、「SSRI」という言葉が有名となり、抗うつ薬の売り上げの90%を占めると言われます。しかし、実際の処方頻度を見るとSSRIは51%強しかなく、あとは未だにTCAが中心なのです。私は、常々セロトニン(5-HT)への選択性は臨床家から見てうつ病治療において必ずしも必要ないが、むしろ5-HTとノルアドレナリン(NA)の両方の再取り込み阻害作用があるほうがいいという印象を持っています。
海外の状況を見ると、副作用が少ないという特徴から一般臨床、特にプライマリーケアで多く処方されているようで、これがあれだけヒットした最も大きな理由でしょう。また、欧米ではベンゾジアゼピンが乱用、依存性の問題からあまり処方されない傾向にあり、不安症状を持った患者さんに対してベンゾジアゼピンの代わりにSSRIが使われているようです。臨床医の先生方の共通した見方として、効果は従来のTCAを越えるものではなく、逆に重篤な症例だと効果が低くなると言われます。また、副作用が少ないとされながらも初期の消化器症状など使いにくさがあります。日本では発売されたばかりですので、うつ病の治療がどう変わるのかはこれからのことです。
しかし、SSRIでは効果発現の遅さ、最大効果の低さ、長期投与での再発といった問題点が指摘されており、こうしたことをNAやドパミンで解決できないかと考えて開発されたのが、次に述べる第4世代抗うつ剤であるSNRIであります。
SSRIの性的機能障害は5-HT3を介したものだと考えられており、5-HT3拮抗薬の併用で性機能障害が改善したという報告もでてきています。
フルボキサミンをはじめとするSSRIは薬物相互作用が指摘されています。フルボキサミンは薬物代謝酵素Cytochrome P450(CYP)1A2やCYP3Aなどを阻害するので、併用禁忌の薬剤があります。
こういった理由からも、次に述べる第4世代抗うつ剤、SNRIの登場が期待されていたのであります。