2000.12.30
自閉症は遺伝らしい
自分の世界に閉じこもり、同じ動作を繰り返し、周囲の人とうまく交流ができない、などの症状を呈する場合、自閉症と診断される事がある。
この自閉症の発症と関連のある遺伝子が見つかったので報告する。
この遺伝子から発現したタンパク質は、「HOXA1(タンパク質は大文字、遺伝子は小文字で書くのが普通) 」と呼ばれ、胎児の初期の脳の発達に関係している遺伝子である。
研究では、 57人の自閉症患者を調べて、このうちの40%は、この遺伝子に突然変異が起きていることを確認した。突然変異した「HOXA1」遺伝子を、片方の親から受け継ぐだけで、その子どもは自閉症にかかるという。すなわち、常染色体優性遺伝である。
実際、この研究では両親からこの変異遺伝子を受け継いだ子どもはたった1人しかいなかった。ただし、この子の自閉症の症状はきわめて重かったという。(両親がともに突然変異遺伝子を持つ場合、突然変異遺伝子のホモ体となる。一般的に、ホモになった場合は症状が重い。)
通常は、片方の親からの遺伝子で発症するが、両親からこの変異遺伝子をもらうと、ほとんどのケースは胎児の段階で死亡するのだろうと推測されてもいる。
ところが、自閉症の子供の親自身、突然変異した「HOXA1」遺伝子を持っていても、必ずしも自閉症ではない。それについては、他の遺伝子が、自閉症遺伝子の発現を抑えていると考えられている。
2000.12.26
インフルエンザHP
ここが、厚生省のやっているインフルエンザのHP。あまり更新されてないような・・・。
2000.12.23
「せんのもとこうのう」で副作用 厚生省が服用中止呼びかけ
中国からダイエット目的で個人輸入した「せんのもとこうのう:(せん之素股嚢)」(漢字が出ません)の服用後に頻脈や動悸など甲状腺機能亢進症が疑われる症状が現れたことが分かり、厚生省医薬安全局は22日、都道府県に対し事例の通報を求めるとともに、場合によっては無許可販売等の薬事法違反のおそれがあるため監視指導を行うことを要請した。消費者に対しても服用を中止するよう呼びかけている。
医薬安全局によると、この製品の発売元は「広東恵州市恵宝医薬保健品有限公司」。複数の医療機関から、30代から60才の女性6人が服用後、半月から2カ月の間に頻脈、動悸、暑がり感、手指のふるえなどの症状が現れ、臨床検査を行った結果、甲状腺機能亢進症と疑われたとの連絡があった。九月に1例、12月に5例あった。
製品を国立医薬品食品衛生研究所で分析したところ、甲状腺末が含まれていることが分かった。そのため同局では、この製品を服用すると、甲状腺機能亢進症を発現するおそれがあるとして、「すぐに服用を中止し、医師の診察を受ける必要がある」としている。
なお、商品名、あるいは成分名に「絞股蘭」、「股嚢」あるいは「康健」という言葉が含まれているダイエット薬の場合、かなりの確率でその商品に甲状腺粉末が含まれている事が当方の調査により明らかになった。
御芝堂清脂素、康麗得清脂膠丸、軽体堂清脂素などは、甲状腺粉末を含有する可能性がある。(未調査)
2000.12.22
うつ病にやはりセントジョーンズワートが
British Medical Journal(321:536-539)から。
軽度〜中等度のうつ病患者に対してオトギリソウ(Hypericum perforatum)エキスを投与すれば、塩酸イミプラミンと同等の効果が見込めそうだと報告している。
この論文では、外来患者324例を対象として多施設二重盲検試験を実施。患者を無作為抽出法により 2 群に振り分け、一方の群には6週間にわたって1日2回塩酸イミプラミン75mgの投与を行い、残りのグループにはオトギリソウエキス(ZE117、RemotivR:商品名らしい)250mgを
1 日 2 回投与した。
その結果、いずれの群でも同程度の効果が得られたとの事詳細は省きます(笑)。
オトギリソウエキスの有意な利点として、不安に伴う身体症状の軽減効果と薬剤に対する耐容性(どれだけ体などに副作用なく服用できるか)の高さが認められた。オトギリソウ群で副作用を訴えたのは39%だったのに対し塩酸イミプラミン群では63%だったそう。
SNRIと似た作用を示すと言われるセントジョーンズワート、SNRIを超えられるか??それとも、この植物から新しい抗うつ剤が見つかるのか?今後とも面白い展開がありそうである。
例のアリストロキア酸含有漢方薬について
防已、木香、細辛、木通自主基準設けて評価
腎障害並びに尿細管がんへの関与が報告されているアリストロキア酸(AA)について、日本漢方生薬製剤協会(生薬及び漢方・生薬製剤製造・販売企業80社が加盟)の技術委員会は、自主基準を設定するとともに、加盟会社から提出された資料をまとめた結果、日本国内で正規に製造あるいは輸入販売されている生薬及び生薬・漢方製剤の安全性が明らかとなり、15日に神戸薬科大学で行われた第29回生薬分析シンポジウムで発表した。
1993年から2000年にかけて、AAによると考えられる腎障害並びに尿細管がんが、欧米各国並びに日本国内(がんに至るまでの報告はない)で報告された。この報告を受けて、各国で相次いで注意を呼びかける通知が出され、とりわけ5月30日に出されたFDAからの通知には、AAを含むあるいは混入する恐れのある植物原料のリストが収載され、その中に日本薬局方に収載されている防已(ボウイ)、木通(モクツウ)、木香(モッコウ)、細辛(サイシン)が含まれている。
日本では、7月に厚生省医薬安全局から医薬品・医療用具等安全性情報第161号が発表され、「アリストロキア酸を含有する生薬・漢方薬について」という注意情報が出された。
そこで、日漢協では、「局方生薬を使用している限りはAAの混入はあり得ない」としつつも、「日本国内で製造あるいは販売されている生薬及び製剤の安全性保証データを持っておくことが必要」と判断し、調査を実施したそうである。
報告したのは、技術委員会の近藤誠三氏(小太郎漢方製薬)で、日漢協では7月に「生薬及び漢方・生薬製剤のアリストロキア酸に関する自主基準」としてAA‐Tの試験法を設定し、会員や関係諸団体に通知するとともに、自主基準に基づいて加盟各社から提出された資料をまとめ、日本国内で正規に製造あるいは輸入販売されている生薬及び生薬・漢方製剤の安全性を保証した。
具体的には、日漢協加盟69社から何らかの回答が得られ、対象品目を保有しているが、販売のみで製造会社より報告8社、日本生薬連合会へ報告五社、対象品目なし16社があり、日漢協への試験結果報告は40社であった。
とりあえず安全性は確保されたとの事だが、まだ不透明な部分があるのは否めない。
ただ、漢方薬の使い方自体が間違っているのではないかとする漢方薬剤師の意見も(私を含め)ある。
トマトジュースはどういう効果をもたらすのか?・・・
長期間のトマトジュースの摂取は、栄養状態の良好な高齢者において細胞性免疫にあまり影響を与えずに血漿(血液中の赤血球などを除いた液体)のリコペン(ベータカロチンとかビタミンAの仲間)濃度を増加させることがわかった。
カロチノイドの免疫調整能力は、ベータカロチンにおいては徹底的に研究されてきたがトマトの赤色色素(リコピンとかリコペン)で化学的に全天然カロチノイド色素の親物質とされるリコペンの活性に関するデータは不十分だった。そのため、研究では長期間のトマトジュース摂取が健康な高齢者の細胞性免疫に及ぼす効果に焦点を当てた。
この介入研究の参加者は、63〜86歳の女性33例と男性20例。参加者を2つの群に分け、一方の群には1日330mlのトマトジュース(1日47.1mgのリコペン含有)を、別の群にはミネラルウォーターを8週間摂取させた。
ナチュラルキラー(NK)細胞数(ガン細胞などをやっつけてくれる細胞)と細胞障害活性、サイトカイン(生体内の微量な物質:生体の恒常性維持のために存在)の分泌、リンパ球の増殖、そして遅延型過敏性皮膚反応(1日以上たってから生じるアレルギー)を測定し、全被験者の免疫状態を評価した。
その結果、トマトジュースの摂取によって経時的に血漿のリコペンとベータカロチン濃度が有意に増加した。介入期間の最後に、両群とも腫瘍壊死因子(TNF)とインターロイキン(IL)-4の分泌は増加したのに対し、IL-2(インターロイキンは、アレルギー等にも関わっている生体内物質の一つ)の分泌は減少した。しかし、トマトジュースの摂取はリンパ球の増殖、遅延型過敏性皮膚反応、あるいはNK細胞の数に影響を及ぼさないことがわかった。介入期間の最後には、両群でナチュラルキラー細胞の細胞障害活性は増加していた。これは、すなわちナチュラルキラー細胞活性にトマトジュースは影響せず、純粋にカロチン系の抗酸化物質を摂取できる事を示している。
出典:(Nutrition 130:1719-1723)
大脳に自己回復力がやはり存在
交通事故などで脳が損傷を受け、大脳に伝わる情報が不足するようになると、大脳皮質が感覚を増幅する機能を働かせて情報不足を補おうとすることが明らかになった。脳には、重度の傷害があっても、意外に高い回復能力が残されているとみられる。研究がさらに進めば、寝たきり状態の患者のリハビリテーションなどにも役立つかもしれない。
研究では、入院中の患者13人(平均入院期間11.2年)を対象に、最新のMRI(核磁気共鳴画像)で脳が発する微弱な電気信号を測定した。手首にある正中神経に電気刺激を与え、健常者14人から得られたデータと比較。
その結果、健常者は刺激を加えた0.02−0.03秒後に、脳内に最も強い電気信号が現れた。患者の刺激直後の電気信号は健常者より微弱だが、0.045秒後には健常者とほぼ同じ強さの信号を発した。ところが患者は、健常者では電気信号が消えつつある0.06秒後に、最大の信号を発することが明らかになった。しかも信号は、健常者のピークの2倍近くの強さに達していた。
外界からの刺激は電気信号として、神経から脊髄(せきずい)を経て大脳に達する。この電気信号が大脳皮質の「1次感覚野」を通過すると感覚として認識され、パソコンのメモリーのように仮に記憶される。激しい交通事故に遭った場合など、首が支点になる形で頭部が急激に振り回され、頚部(けいぶ)の神経線維がダメージを受ける。神経線維に損傷があると感覚がわずかしか脳に届かない。
この 研究の結果は、大脳皮質が増幅機能を働かせて情報不足を補おうとしていることを示している、と考えられるだろう。
ワインに健忘症予防効果が
ワインに含まれるアミノ酸の一種に、人間の記憶を司る物質の分解を阻害する作用がある事が判明。ただ、どの程度効果があるのかは発表されていない。
某社の陰謀の可能性も否定できない・・・。
2000.12.6
食欲抑制作用のある化合物発見
マウスの食欲を速やかに失わせ、多くの面で絶食と似た方法で体重減少をもたらす化合物を合成した事が、Science(288:2379-2381)に掲載された。
C75と呼ばれるこの物質はマウスには無毒で、注射すると20分以内に食物に対する興味を一掃する。C75の効果は注射を中止すると数日で消失し、マウスは正常な摂食を回復するとのこと。
食欲調整の脳内主要経路
C75を利用して発見したものは、少なくともマウスの身体が自然の食欲調整に使用する脳内の主要経路であるという事に尽きる。おそらく、同様のシステムがヒトにも存在すると考えられるが、C75が同じ作用を示すかどうかはさらに研究する必要があるだろう。
どうやら、このような経路が脳内に存在することは珍しいそうである。通常、研究者は体脂肪あるいは肝組織内で、脂肪酸(リノール酸とかドコサヘキサエン酸とかの総称)と呼ばれる分子を合成するために利用されるカスケード反応(合成反応の名前)を調べる。
それにもかかわらず、今回この経路は特定の脳細胞において発見されただけでなく、これらの細胞は食欲を調節することが判明している脳の領域に集中していた。
癌や感染症などで発生する衰弱にC75が直接関連している可能性は低いとの見解を某氏が述べていた。また、脂肪組織によって産生されるレプチン(食欲抑制因子の一つ)との直接的関連も否定していた。
レプチンは、数年前の発見時には華々しく見出しを飾ったものの、完璧なダイエット薬としてはまだ実現されていない。
C75の特徴の根拠として、肥満しやすいレプチン欠如マウスにおいて、C75は劇的な体重減少をもたらす事が報告された。また、C75はこれらマウスのインスリン抵抗性糖尿病を回復した。これは、将来C75を糖尿病管理にも適用できること示唆している。
NPY産生阻害により摂食を止める
脳の視床下部内の食欲中枢に存在するニューロペプチドY(NPY)と呼ばれるホルモンが、主要な食欲調節物質であることは以前から知られていた。動物が絶食すると、NPYが増加し、食欲は急激に増加する。しかし、C75を投与したマウスでは、NPYの産生は急激に減少する。このことから、C75は脳内のNPY産生を阻害することによって摂食を止めると考えられている。
この研究では、研究者はC75の1回量をマウスに注射し、行動、体重、身体の化学的性質の変化を観察した。結果、マウスは投与されたC75の用量依存的に、最高30%まで体重が減少し、この減少は、おもにマウスが摂食をやめたことに原因があるのではないかと考えられている。
例えば、中等度の用量により投与第1日で摂食行動が90%以上減少した。薬剤の効果が消失すると,摂食はその後数日間で正常に回復した。
代謝抑制なし!
C75を注射したマウスは、絶食時に体組織を損失する絶食マウスに似ており、脂肪と同様に筋肉も損失する。しかしC75投与マウスは、無投与の絶食同腹マウスに比べ体重減少量がはるかに大きかった。さらに顕著だったのは、代謝の差であった。絶食によって減量しようとすると、数日後には代謝が衰える。これは、ダイエットを妨害する生存機序である。絶食マウスではこれが観察されるが、C75投与マウスでは代謝速度が全く低下しない事も明らかとなった。
C75は、ブチロラクトンと呼ばれる有機分子族の小集団である。C75は、身体が脂肪酸を産生するために利用する脂肪酸合成酵素(FAS)を阻害するために、ジョンズホプキンス大学の科学者によって合成された新しい分子である。脂肪酸は、他の物質とともに体脂肪の基礎単位となる。
脂肪酸の生成経路は、動物が食物を過剰に摂取している間、活性化される。この研究は、このような過剰摂食がどのように脳で指令されているかを示している可能性がある。
過剰の食物に対する通常の応答は、食欲の減退である。C75は、経路を調節しNPYを減少させ、減少に伴い食欲を減退させることにより、この応答を人工的に誘発させると考えられる。
C75の研究は、多くの癌細胞に存在する異常な脂質代謝に関する研究から生まれたものである。
例えば、乳房、前立腺、癌細胞などは多くの脂肪を産生する。これに応じて、これらの細胞はFASなどの構成的(元々存在する)酵素を多く産生する。
C75はFASを阻害し、機序を解明するために研究者が合成した化学物質の1つであった。が、しかし、C75には副作用があり、実験動物は体重が大幅に減少してしまった。そこで、この新しい経路の可能性を研究する事により、副作用の少ない食欲抑制薬が開発される事を期待し、今日の講義を終わる事にする(笑)。